山登りした人ならわかるかも知れない。 ふもとから、これから征服しようする頂上を見上げた時は、意欲万々である。 しかし、いったん登りはじめたら、しばらくは頂上が見えなくなる。 いつまでも林の中をさまよっていて、それが永遠に統くような気持ちになり、ひどく疲れる。 山登りをする人のそんな時の気持ちに似ていた。 樹頂部までこぎつけた。 頂上まで登 りつめたのである。 「きっと、この樹の仕事を見て、ひ どく苦労して作ったと思うでしょう ね。 それではダメなのです。 」 苦労をしたとわかる仕事を残して は、本当のプロとはいえないかもしれない。 プロとして、畑作りの樹を何10本と仕上げることもある。 自分 にとっては、決して難しい仕事ではない。 複雑なところがない、素直な樹づくりなのに、思うように手が動いてくれなかった。 今まで、こんなことはなかった。 「反省しています。 自分の未熟さを痛感させられました。 何か、もう一度、自分のプロとしての姿勢を問い直させてくれたような気がします。 」 いつも壁にぶつかり、それによってはね返されては、また立ち上りもうひとつ、先の段階へ進もうとする。 |