この樹は、皐月の畑作りの樹形と似ている。 今ある旺盛な枝振りも以前、一度、丸裸に切りこんだものから、発達したものだ。 では、太い幹のもつダイナミズムをいかに表現するか……まず、すべての枝を下げる。 大地に向かって、グッと張りだしているようにする。 そうすれば、どつしりとした重量感が生まれる。 現在、枝葉が上へとはねあがっている。 天に向かって、ジャンプしている。 樹勢が強い、元気印の椿。 樹頂部も、まるで太陽のほうに顔を向けて、全身に光を浴びようとしている。 葉も黒光りし、ツヤツヤと、健康優良児といったところ。 何か所か大きな傷あとがある。 正面の幹、左側面の足元、そして、樹頂部にも大きな傷がある。 しかし、痛々しさがない。 旺盛な枝が、傷あとを忘れさせてくれる。 だが、健康的にいくら上にのびていても、生理的に強さが感じられるだけのことで、鑑賞する場合、つまり美的に観ると、その逆のことがいえる。 上方へのびるままに作ると、樹の高さは表現できるが、横のひろがりが狭く感じられるようになる。 細くなって見えるのだ。 これでは、樹のもつダイナミックな力強さを表現できない。 そこで、上方へと向いている、枝下げてみる。 下方へ、横へと下げていけば、ひろがりがうまれてくる。 |