何とも不思議な樹形である。 世の中に、こんな形をした樹もあったの 樹づくり人は、まだ腕組みをしている。 樹を見つめている。 「ちょらと珍しい樹形の杜松がある」と、樹づくり人から、電話が入った。 だいたい、樹づくり人が珍しい樹形と、自らいうもの、実に珍しいことなのである。 いつも、石井氏の作業場に入ると、取材班が取材対象の樹を見て驚かされるのが、蕪である。 とても盆浅になるとは思えない大きな樹、あるいはこんなに太い樹が今までよく人目にふれず残されていたと思える樹など……とにかく驚かされるのだ。 そんな驚いて眺めまわしている取材班を尻目に、樹づくり人は平然としているのが、恒例なのだ。 ところが、樹づくり人は、腕組みをしている。 オッと、ここでくれぐれも誤解しないでほしい。 樹づくり人は、どのように整姿していくのかを、考えているのではない。 樹づくりで悩んでいるのではないのだ。 「エエ、今回はどのように仕上げるのでしょうか?」「それがわかれぱ苦労はしない」 と、笑みをうかべ、作業へ突き進み仕上げていく。 これも恒例の光景なのである。 すでに、樹づくり人の頭脳のなかには、今回の杜松の仕上り後の姿が明快にはっきりと描きだされているのだ。 それでなければ、3時間ほどの間に、整姿が完了できるわけがないではないか。 |